書き出しはインパクトある短文で

書き出しはインパクトある短文で

「書き出しさえ決まれば、小説は8割できたも同然」。出所は不明ですが、多くの小説家の気持ちを表現した言葉です。意味は「文章は書き出しが最高に難しい」ということ。なぜ書き出しがそれほど難しいのかというと、書き出しがその文章全体の雰囲気をすべて決定してしまうからです。

舞台に登場した役者は、服装、振る舞い、第一声の話し方で、どんなキャラクターなのか判断されます。文章の書き出しも同じようなもので、書き出しでインパクトを与えると、読者は惹きこまれます。また短文のほうが印象に残ります。

日本の誰もが知っている名作にも、インパクトある短文で忘れることのできない書き出しがたくさんあるので、いくつか紹介します。

短文でインパクトある書き出し
・「国境の長いトンネルと抜けると雪国だった」(川端康成「雪国」)
・「メロスは激怒した」
(太宰治「走れメロス」)
・「山椒魚(さんしょううお)は悲しんだ」
(井伏鱒二「山椒魚」)

いかがでしょうか?かなりインパクトある書き出しで心に残るものばかりです。こんなレベルの書き出しが素人の私たちに出せるものではありませんが、見習いたいものです。

名作のすべてがインパクトある書き出しなわけではありません。例えば次の文章。

短文だがありきたりな書き出し
・「ある日のことでございます」(芥川龍之介「蜘蛛の糸」)
・「ある日の夕暮れのことである」
(芥川龍之介「羅生門」)

ありきたりな書き出しです。このような書き出しでも、それなりの魅力はありますので、難しく考えすぎないことも大切です。

書きたいネタがあり、書き出しがうまく書けないときは、そのネタを人に話すことをオススメします。相手が頷いたり、笑ったりした部分が話のネタの重要ポイントです。ネタのポイントが分かれば、書き出しもスムーズにいくことでしょう。

最後に書き出しのタブーをお伝えします。

例えば「先進国」というテーマで文章を書くとき「先進国といえば・・・」や、「思い出の場所」というテーマの文章で「私の思い出の場所は・・・」と言った書き出しは面白くありません。理由は単純で、テーマやタイトルと同じ言葉をオウム返ししているだけだからです。

書き出しは、本編を魅力的に見せる役目があります。気の利いた書き出しが思い浮かばない場合でも、オウム返しの文章は絶対に避けるべきです。


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