時系列どおりに書かないで、読者の心を掴む

時系列どおりに書かないで、読者の心を掴む

週刊誌に載っているような芸能界や政財界のスキャンダル、はたまた殺人事件のような”事件記事”は、読者の気持ちを掴むために話の組み立て方が工夫されています。それが「おいしいものから食わせろ」です。

事件が起きるには、そこに至るまでの工程が必ずあります。仮に通り魔事件のような唐突な事件であっても、犯行は、犯罪者の生活環境や心理状態などあらゆることが積み重なった結果に起こるものです。

つまらない事件記事は、事件発生までのいきさつを分かりやすく伝えるため、犯罪者の生まれた環境から順を追って書いたりしています。しかしこれでは読者は読んでくれません。文章冒頭が面白くなければ、たいていの読者は最初の数行で読むのを止めてしまいます。

上手な文章は、時系列どおりに書かれていません。例えば次のような話の順番で読者の心を惹きつけます。

読者の心を掴むため、あえて時系列から書かない
記事冒頭。生々しい事件シーンの解説
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事件の概要
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事件に至るまでの時系列
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冒頭事件の総括

魅力的な映画も同じような考え方で作られています。

映画冒頭は、説明抜きの印象的な映像が流れます。それと同時に意味ありげな会話が繰り広げられますが、観客は100%の意味を把握できません。印象的な映像と会話に観客の気持ちは惹き込まれていきます。「早く説明して欲しい」「先が知りたい」という欲求が生まれ、時間がたつのも忘れ映画の没頭します。

映画の例を分析すると、「時系列どおりに書かない」以外に読者を惹きつける方法がもうひとつ分かります。それは、冒頭のおいしい部分では、すべてを語らないこと。ある程度謎を残したほうが、読者の心は惹きつけられるということです。

また、「時系列どおりに書かない」魅力的な書き方の例をもうひとつ挙げると、書き出しをあえて「過去」から書くテクニックです。小説をお読みになる方は、小説の冒頭が、回想形式で始まる文章を読んだことは無いでしょうか。

このような「過去から始まる」書き方は、読者の不意をつき、何のことか分からず気持ちを惹きつける効果があります。どんな文章でも応用は可能です。例えば現在の不況をテーマに書くとき、冒頭にバブル期の異常景気を語るのもいいでしょう。景気の明暗のコントラストを効果的に書くことができます。


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